第25期会長 田ノ口太悟 所信表明

2023.05.24

 全国曹洞宗青年会(以下、全曹青)は第25期において創立50周年を迎えます。この節目に、いま一度当会の創立理念である『大衆教化の接点を求めて』の精神に立ち返り、「現代に生きるわれわれ青年僧侶が当会の精神とどのように向き合うか」「当会の創立理念である『大衆教化の接点を求めて』をいかに実践するか」を念頭に活動を展開します。

 昭和50年に創立した全曹青の初期の広報誌「曹青通信」には次の「四つの柱」が毎号飾られていました。

 この四つには、創立時の諸先輩方の活動への想いが込められています。それは「僧侶が個々で教化活動を行うだけでなく、僧侶相互の活動と地域の活動を活発化する」「かつての寺檀関係の枠を超えて、社会全体との繋がりにおいて僧侶としての生き方を見出す」ということです。

 僧侶の生き方の核にあるものは、お釈迦様の御教えであり、御教えを一人でも多くの方にお伝えしたいという気持ちです。全曹青の創立理念である『大衆教化の接点を求めて』や上記の「四つの柱」も、お釈迦様の教えをより多くの人々に拡げることを共通の目的としています。

 僧侶としての生き方あるいは活動エネルギーの源泉であるお釈迦様の人となりとその教えを、青年僧侶があい集って学び、実践する。そして青年僧侶の活動が将来の全曹青、また曹洞宗門にとっての活動の礎となるような活動を展開する。お釈迦様から道元禅師・瑩山禅師を経てこれまで相承されてきた仏法、それに全曹青の諸先輩方が紡ぎ上げてきた想い、現役会員の活動への想い、それらを一つに結びつけ、未来へと放つ。その実践のため、第25期のスローガンを『結集:想いを結び合わせ、未来へ』といたします。

◯ 全曹青創立50周年記念事業

 全曹青が昭和50年の秋に発会して50年間、社会は大きく変化いたしました。家族関係の希薄化、連絡手段のデジタル化、葬祭行事の簡略化。変化を数え上げれば、枚挙にいとまがありません。

 全曹青はそのような変化の中、『大衆教化の接点を求めて』の創立理念のもと、一般の方々の意識に沿った教化方法に取り組むことで活動を継続してまいりました。50周年という得難い機会に、変化の折々において率先して新しいことに取り組む気概を持って全曹青を相承してこられた諸先輩方に敬意を表すと共に、その原点を振り返る事業を行います。

 また、全曹青は加盟曹青会会員の方々に支えられて共に50年を歩んでまいりました。全曹青と加盟曹青会の協働の結果として、創立50周年事業が行えるような形を理想とし、これを機会に更なるネットワーク構築ができるように取り組みます。

◯ 魅力的な頒布物製作や情報発信

 第24期において、株式会社モンベルとコラボして「ZENSOUSEI ZEN CUSHION」の企画・製作に取り組みました。極めて先進的なこの頒布物は、幸い全国の宗侶方から高い関心をいただいております。全国的に展開する会社との共同の企画過程を通じて、全曹青にもたらされた経験と知見は目覚ましいものがあります。この過程で得られたものを全曹青の重要な資産と位置付けて、今後の全曹青の頒布物企画に生かしてまいります。

 また、コロナ禍から抜け出し社会活動が再開される中で、対面で頒布できる機会も増えつつあります。同時に全曹青頒布物の魅力を広く発信する企画を催し、広く周知に努めます。

◯ 『大衆教化の接点を求めて』の精神に立ち、未来を見据えた教化・広報活動

 創立から50年間、全曹青は『大衆教化の接点を求めて』の創立理念に立った活動を展開してまいりました。50周年の節目である第25期においては、現代社会のあり方と今後を強く意識した教化方法の参究と広報活動に力を入れていきます。

 教化活動としては、40周年記念事業として始まった「味来食堂」を継続し、さらに時代の変化に機敏に対応した新しい教化方法の探究に取り組みます。

 創立50周年記念事業等の行事が多数予定される第25期においては、広報発信の役割がこれまでにも増して重要になってきます。近年目覚ましく整備されるに及んだSNSを含む全曹青の各Web媒体で速報性を持ちながらも丁寧な情報発信を行うことで、広報と同時に幅広い層への布教活動も達成できるよう努めます。

◯ 国際的視野を拡げる意識を持つ

 コロナ禍の影響で国際交流活動が難しい状況が続いていましたが、昨年からは世界的に人の往来が復活しつつあります。全曹青としても、会長・役員を輩出する世界仏教徒青年連盟や全日本仏教青年会と協力し、改めて国際活動に注力いたします。おりしも世界仏教徒青年連盟においては、村山博雅師(全曹青顧問)が会長に再就任されました。このご縁を頼りに、今後も「世界における全曹青の活動」を推進してまいりたく存じます。

 また、全曹青の国際委員会においても、委員会活動を通して国際的視野を拡げる取り組みを行います。第24期においては英語版公式HPを作成し、全曹青の活動を更に広く広報することが可能となりました。情報発信媒体を十全に活用し、第23期から取り組んでいる「ON-LINE ZAZEN IN ENGLISH」の広報発信はもちろんのこと、現地開催による英語坐禅会や、青年僧侶を対象とした研修会を開催し、その情報発信を行います。

◯ 災害支援活動に全曹青会員が積極的に取り組む

 2023年に東日本大震災は13回忌を迎えました。近年の全曹青は強い問題意識を持って組織体制の構築と外部団体との協働を行い、東日本大震災を始めとする天災水害への災害支援活動を通して会員諸師の自主的なボランティア活動意識の醸成にはめざましいものがありました。しかしコロナ禍の影響で近年は県を跨いだ災害支援活動が限定されたものになり、経験の継承が課題としてあります。それへの対応を第25期では考えてまいります。

 また、災害が起きた際の被災地曹青会や関係団体との情報共有を密にし、コロナ禍前と同様、災害への備えに万全を期すと共に、全曹青災害メーリングリストや広報誌『SOUSEI』、全曹青各Web媒体を通して災害支援の情報発信を引き続き行ないます。

 また、災害が起きた際に、被害に遭われた方々のために何かしたいが、そのためにどのような方法が可能か分からない方も多いと存じます。青年僧侶が積極的に災害支援活動に取り組めるよう、全曹青として研修会を企画し、的確な第一歩を踏み出せる機会の提供を行なってまいります。

◯ 「禅と海 里づくり・交流促進プロジェクト〜 太祖瑩山紹瑾禅師七百回大遠忌 〜」への参画

 全曹青第25期中に、瑩山禅師七〇〇回大遠忌が厳修されるという僥倖に恵まれます。曹洞宗門を挙げて取り組む大遠忌に、全曹青としても報恩の誠を捧げたいと思います。「禅と海 里づくり・交流促進プロジェクト」に参画し、全曹青として報恩行事を盛り上げます。

◯ 全曹青組織の充実と効率化へ

 全曹青は全国規模の連絡協議体です。連絡協議体であるからには、多くの加盟曹青会にご参加いただき、全曹青と加盟曹青会相互が強い結びつきを持てば持つほどその繋がりは強固なものになります。そのために全曹青としても魅力的な団体となる努力を常にいたす所存です。

 全曹青会務としては、少子化に起因する青年会員の減少が無視できないものとなっています。前期でも取り組んだオンライン会議等の併用を通して、会務・財務の効率化と、青年会員の減少に合わせた会務の見直しを不断に行います。

青年僧侶のエネルギーを結集しよう

 2020年から拡大したコロナ禍は、コロナワクチンの接種環境の整備と社会的対応の整備により、その危機から脱しつつあります。既に世界的には社会状況がコロナ前に戻っている国も多い中、日本においても新型コロナウイルスの感染法上の位置付けが「5類」となり、社会は事実上の平常化に向かっています。

 コロナ禍の数年間では、全国組織である全曹青の対面による活動も限定されたものになりました。

「四つの柱」に「青年僧侶のエネルギーを結集しよう」とあります。全曹青草創期において大切にされていたこの言葉の通り、青年僧侶のエネルギーを結集することがお釈迦様の教えの伝道という僧侶本来の目的をより促進することに繋がります。そして「青年僧侶のエネルギーの結集」は、まさに青年僧侶相互の交流によって成されるものです。

 「結集と交流」。その想いを全曹青会務運営の根本に置き、参集行事を再開していく中で、行事のノウハウと会員相互のコミュニケーションを今一度積み上げていく意識を持って、全曹青活動を展開したいと思います。

全国のご寺院様、全国会員諸師におかれましては、何卒ご理解ご協力を賜りますようお願い申し上げて、私からのご挨拶並びに所信とさせていただきます。

全国曹洞宗青年会第25期会長

田ノ口太悟 合掌

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