2015.06.22
全国曹洞宗青年会第21期会長 安達瑞樹
全国曹洞宗青年会(以下、全曹青)は40周年という節目を無事円成し、新たなスタートをきりました。この門出において次の節目となる10年後、青年僧侶を取り巻く環境はどうなっているのかと考えたとき、すこし気掛かりになりました。地方過疎化による寺院経営の難しさ。宗教儀礼に対しての考え方の変化など現在においても大きな問題が、10年後どのように存在するのでしょうか。次の世代に繋げるために、いま私たちはどうあるべきなのでしょうか。
4年前の東日本大震災では、一人の青年僧侶として、そして、宗教者として深く考えさせられました。未曾有の被害、悲惨な状況、自身の未熟さを痛感するなかで、私が活動出来る場所を見つけることができたのは全曹青でした。自身が行動しないでどうするのだという強い意志を持った諸先輩方のご指導のなか、避難所や仮設住宅へ赴き、寄り添い耳を傾け、言葉をお掛けしに行った私が反対に言葉をいただきました。その時の気持ちは今でも忘れません。
特に昨年、地元兵庫県第二宗務所管内において発生した豪雨災害においては、全曹青と地元青年会の力を強く感じました。お盆の疲れも残る八月下旬、大量の土砂を掻き出す大変な作業です。本堂内に立ちはだかる1メートルを超える土砂を前に立ち尽くす私でしたが、全国各地からお越しいただいた皆さまのお陰で土砂は確実に減っていきました。減っていく土砂と、大粒の汗を流しながら作業いただく方々のお姿にどれだけ勇気づけられたことでしょうか。どれだけ救われたでしょうか。どれだけ僧侶として自身を見つめたでしょうか。そこに私は全曹青のなんたるかを強く感じたのです。同じ意識を持った仲間に会える場所としての全曹青の力に、私は大変救われたのです。
災害を機に改めて認識したことは他にもあります。広報委員会によって国内のみならず世界へ発信された情報は、多くの人々の反響を呼び、大きな支援へと広がりました。世界仏教徒青年連盟を通して海外からいただいた多くの祈りは、私たちが世界の同世代仏教徒とともにあるということを再確認し、交流はさらに密なものとなりました。総合企画委員会では人々の想いを受け止め、届けたいという信念のもと、文通や写経として被災地と全国を結びました。観世ふぉん委員会では、被災地での行茶活動を通して苦悩に生きる人々に寄り添うことはもちろん、この活動のなかで日常の檀務において生まれる青年僧侶としての共通の悩みや苦悩が多いことに気づき、どう向き合うかという活動の指針にもなりました。全曹青は同世代が地域、安居、学歴、境遇の壁無くお互いの姿を見つめ、時には悩みを共有し、自身を喚起させられる仲間に会える。そして、あらゆる苦難を共に乗り越えられる仲間と活動ができる場所なのです。会員の皆さまと取り組んできた活動は、私たちの力となって確実に次世代へと繋がっていくのです。
笑顔の君と、おなじ空を見上げて・・・
今期は全国の青年僧侶が共に歩むというスケールメリットを改めて見つめ、会員同士の相互交流、情報の共有を行っていきます。命の声に向き合い、仏道を求めてやまない私たちが、同世代で自由に問題を出し合い、支え合っていく環境を作ります。国内だけでなく、海外の宗教者や仏教徒との交流を促進し、これからの未来を共に考えます。戦後70年を迎え、二祖峨山禅師六百五十回大遠忌を迎える今期、私たちの今を見つめ直し、3年後の世界仏教徒連盟、世界仏教徒青年連盟世界大会、5年後の東京オリンピック、次の世代が入会する十年後を見据え、さらなる共同体へと発展していること理想に掲げ、古教照心の示訓を旨に、自己の研鑽に勤め、大衆教化の接点を求めて、心豊かな社会の形成に皆さまと取り組んでまいります。
私たち青年僧侶のがむしゃらな挑戦が、やがて多くの人々を導いていくことを。
会員、宗門、そして共に生きる多くの人々と、その感動を共有し、未来へと繋げます。
全曹青の連絡協議体としての強化
“会員同士、おなじ空を見上げて”
今期は加盟48団体の交流を促進し、理解を深めます。お互いの活動を見つめる場を増やし、他団体の活動が自身の活動に活かすことができる場所を作り、互いの曹青会の連携を一層深めるため、ご協力をお願いいたします。
その実現のためにも、SNSやホームページ『般若』、災害メーリングリストなど様々な方法を駆使し、情報共有を強固なものにします。研修会や各曹青会の活動情報をはじめ、今後起こりうる災害にむけて迅速に対応できる体制を会員の皆さまと再構築いたします。
総合企画委員会・教化法式委員会・広報委員会
“共に行ずる、おなじ空を見上げて”
総合企画委員会では布教教化の新しいかたちを提案いたします。
広報委員会では、会員相互の情報交換のみならず、青年僧侶としてのメッセージを社会へ発信いたします。
また、今期では教化法式委員会を新たに設置いたします。40周年事業であった味来食堂を引き継ぐなど、祖師の教えに沿った私たちにしかできないメッセージを発信してまいります。
特別委員会「災害復興支援部」の設置
曹洞宗東日本大震災災害対策本部復興支援室の連携
“被災地と共に、おなじ空を見上げて”
今期から全国各地災害担当と東日本大震災復興支援担当に分け、災害復興支援部事務局長とりまとめにて、災害時、通常会務に支障をきたさないよう、役割を分担いたします。全国各地の地区連絡員とともに災害時には情報の共有、支援の要請など迅速に対応いたします。また、支援者支援の体制作りが継続した課題となっており、被災地において活動する加盟団体のボランティア活動を後方支援し、活動協力の要請や助成金申請の情報など支援者を支援いたします。
国際委員会を新たに設置(国際間交流を通して)
特別委員会「全日本仏教青年会特別委員会」の設置(他宗派との連携)
“おなじ星から、おなじ空を見上げて”
今後、少子高齢化など様々な要因から国内の人口が減少し、国外からの移住者と接する機会が増えると考えます。その方々との最初のコミュニケーション窓口が宗教であるとするなら、私たちは宗派、国籍を超えて出来ることが沢山あるはずです。
現在、世界仏教徒青年連盟(WFBY)日本センターである全日本仏教青年会(JYBA)において、全曹青は国際委員会を担当し、日本の伝統仏教青年会における国際活動の代表を担っています。3年後の2018年には、曹洞宗が加盟する全日本仏教会60周年記念事業として世界仏教徒連盟、世界仏教徒青年連盟世界大会が国内において誘致され開催されます。2020年には東京オリンピックが開催されるなど、益々国際間交流が活発となる時代に、他国の宗教者や仏教徒、そして文化に触れることによって、青年僧侶としての自身を見つめる機会を作り、やがてその経験が共に生きる心豊かな社会の形成、また各々の布教活動に繋がるよう宗派を超えて企画してまいります。
電話相談事業『観世ふぉん』を常設委員会に
“日常に生きる人々と、おなじ空を見上げて”
第18期から特別委員会として継続して参りました電話相談、ならびに傾聴に関する研修会等の取り組みを今期において常設委員会「心の傾聴委員会」とし、更なる活動を進めてまいります。これはご承知の通り、私たちが僧侶として日常に生きる人々に寄り添い、耳を傾けることは日々の布教活動において如常のことであり、これについて研鑽することは必要不可欠であります。私たちは、加盟団体の皆さまとともに青年僧侶として出来ることを考えてまいります。
私たちの目指す姿勢とは・・・
第21期スローガン『笑顔の君と おなじ空を見上げて』
ともに生きる私たちは、時に地域や国籍、民族や宗教の垣根に苛まれることがあります。しかしながら、その垣根を作っているのも私たちです。それぞれが率先して行動し、笑顔でその垣根を切り開くことができれば、仏の道へ、そして、まだ見ぬ世界へ進むことができるのではないでしょうか。全曹青を通して加盟48団体、そして、国内外のあらゆる団体と連携を取り、広く世界と感動を共有しませんか。災害時は被災地の人々に寄り添い、電話の向こう側にいる日常に生きる人々に耳を傾け、ともに考え行動しようではありませんか。互いが笑顔に包まれたとき、見上げる空はどれほど素晴らしいでしょうか。この貴重な経験が各々の青年会の更なる発展、ご自坊においての布教活動、そして、未来に繋がるよう皆さまと研鑽に努め、活動したいと考えます。宗門御寺院様、青年会会員諸師には全国曹洞宗青年会へのより一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
合掌
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